◆◆ 特級酒?二級酒? ◆◆




  「オレは昔の二級酒が好きだったんだ。」

  「わしは特級酒しか飲まなかった。」

ある程度の歳を召した方の中に、酔ってくるとこんな事を言う人がいます。 そもそもあの『特級・一級』という名称はなんだったんでしょうか。 私が子供の頃に飲んだ酒にも『特級・一級』の文字が入っていましたし、国産ウイスキーにも『ウイスキー特級』 なんてことが書いてありました。
この呼び方というのは昭和15年(1940年)から始まった非常に古い制度で、平成4年(1992年)まで50年間以上も見直されて いませんでした。政府の怠慢さが窺い知れるというものです。
それまではどの様な基準で等級分けをされていたかを要約すると

「お前ら(酒造会社)が高い税金を払えば特級≠くれてやるよ」

と、いうものでした。
(まあ、「特級は品質が優良であるもの。一級は品質が佳良であるもの。二級は特級及び一級に該当しないもの」 というタテマエがあるにはありましたが・・・。)
参考までに税率を示すと



課税率
1KLあたり税率(昭和60年)
特級
38.4%
570,600円
一級
26.6%
279,500円
二級
13.9%
107,900円

こんなにも税金を払っていたんですね。
税率の違いのほかにも味・酒質の審査などがあったのですが、審査時には『審査用の酒』 を提出するなどという事が往々に行われていたようです。(但し、500kl以上の貯蔵量が必要という規定もあったので 小さな酒蔵は品質の良し悪しに関わらず特級≠名乗る事はほぼ不可能だったそうです。)
審査を受けない酒は自動的に『二級酒』になってしまいますが、あえて無意味な審査に出さずに『無鑑査』の名を冠して売り出す 酒蔵も現れ、二級酒でも旨い酒がいくらでもあるということが世間一般に広まってきて、「小さな酒蔵の二級酒は生産量も少なく 手に入りにくい」との理由からプレミアが付き、特級酒よりも二級酒のほうが高価になってしまう逆転現象まで引き起こしました。
このばかばかしい制度は特級が1989年に、一・二級が1992年に廃止になりました。現在では酒造会社が自主的に考え出した 「上選」「佳選」「千寿」「万寿」などといった呼称が付いていますが、はっきりとした決まりがあるわけでもなく、かえって 混乱を引き起こしているのではないでしょうか。
要は自分でしっかりと見極め、自分好みの酒を探し出す事が大事なんですね。

無鑑査
未だ無鑑査≠フ名を冠する酒



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