◆◆ 梅酒を売るのは犯罪か ◆◆



結論から先に言ってしまえば『平成20年4月まで違法だった』という事です。 日本には

「規定による製造免許を受けないで、酒類、酒母又はもろみを製造した者は、 5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」

というおかしな法律がありまして、 一般市民が酒を造る事を禁じています。また、

「酒類に水以外の物品 (当該酒類と同一の品目の酒類を除く。)を混和した場合において、混和後のものが酒類であるときは、 新たに酒類を製造したものとみなす。」(みなし法)

という訳の分からない法律もあります。 まあ、平たく言えばカクテルや梅酒を造る事は法律違反だ!!という事です。 但し、

「消費の直前において酒類と他の物品(酒類を含む。)との混和をする場合で政令で定めるときについては、適用しない。」

なんて項目もあるのでカクテルは除外されますが、その昔はバーテンダーが「新たな酒類を製造しているな!」と 詰め寄られる場面もあったそうです。
みなし法には様々な項がありまして、例を挙げると

酒類 A + 炭酸(炭酸水を含む)= 酒類 A

リキュール + 水or炭酸水 = 新たなスピリッツ

などという何を基準にしているのか全く分からないルールになっています。(詳しくはこちら[法庫.com 酒税法]
話が少々脱線しました。話を梅酒に戻しましょう。
個人が梅の実を焼酎に漬け込む事は(一応)合法にしといてくれたのですが、出来上がった梅酒を売る・利益を得ると なると国税庁が黙っていません。
平成19年に、北海道ニセコ町のペンションオーナーが自家製の梅酒を宿泊客に提供したところ、 酒税法違反≠ニして税務署から没収・廃棄などの行政指導を受けました。
しかし、これはあまりにも酷い、実態に合わないと言うことで、国は規制緩和を検討。20年4月30日の税制改正で、

「酒場、料理店などを営む場合、一定の要件で、製造免許を受けることなく、営業場で自家製梅酒等を提供することができる」

との特例措置が設けられました。これにより、開始申告書を提出し、毎月の製造量を帳簿に記載するだけで (かなり面倒ですが)自家製梅酒を提供することが可能となりました。但し、この梅酒を瓶詰めにして販売する事は禁じられています。
以前は果実酒を造ることすら違法だったので随分と緩和されたように感じますが、いまだに数種の物品は禁じられています。

 禁じられている物は次の通り。



   (イ) 米、麦、あわ、とうもろこし、こうりゃん、きび、ひえ若しくはでんぷん又はこれらのこうじ

焼酎に蒸したもち米、米麹を漬け込むと「本直し」という味醂が出来上がるので、禁止されるのが分からないでもないが、 麦やとうもろこしを焼酎に漬け込むことでウイスキーが出来るとでも思っているのでしょうか。理解に苦しみます。


   (ロ) ぶどう(やまぶどうを含む。)

葡萄に限らず果実には元々野生の酵母が付着している為、絞ってほうっておけばアルコールが生じます。 しかし35度の焼酎の中では酵母は活動できず、アルコール発酵も起きません。 そもそも何故ぶどうだけ禁じているのか分かりません。ワインやブランデーが出来るのという考えなのでしょうか。理解不能。


   (ハ) アミノ酸若しくはその塩類、ビタミン類、核酸分解物若しくはその塩類、
      有機酸若しくはその塩類、無機塩類、色素、香料又は酒類のかす

核酸分解物?アミノ酸?ホムンクルスでも創るつもりですか。


   (ニ) 酒類

何がしたいのか、何をさせたいのか訳が分かりません。




少しづつですが、だんだんと規制が緩くなってきています。しかしながら、ビールやワインをホビー感覚で手作りできる海外と比べると、 日本では手足を縛られているも同然です。
昭和30年後半、東北地方のあちらこちらで行われていたドブロクの密造を止めさせる為、密造防止パンフレットという ものがばら撒かれたましたが、その内容は

「密造酒を飲んでいる家庭の子供は勉強が出来ない」

「密造酒に多く含まれる フーゼル油をネズミのエサに混ぜて食べさせたところ、奇形や死産が多発」

「密造酒にはメチルアルコールが含まれている」

などの虚言が多数掲載されていたそうです。
税金の取れない酒造りを止めさせる為の苦肉の策だったのかもしれませんが、 今現在でも考えている事はあまり変わっていないのかもしれません。 お国の為に仕方がないので大いに税金を払って酒を飲みましょう!!




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